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2011年10月21日

関東大震災(吉村昭)


1923年(大正12年)9月1日、関東地方を激震が襲った。逃げ惑う人々に、今度は大火災が襲いかかる。20万人もの犠牲者を出した関東大震災を、生き残った者の証言を交え克明に描き出した作品。

1923年9月1日午前11時58分、平和で穏やかな暮らしが突如破壊された。激震は建物を倒壊させ、人々を恐怖のどん底に突き落とす。だが、本当の恐怖はそれからだった。安全な場所に避難してほっとしていた人たちを、今度は炎が襲った。地震後あちこちから起こった火災が、恐ろしい勢いで広がったのだ。黒焦げの死体、そして川には炎を逃れようと飛び込み溺死した人々の死体が・・・。逃げ惑う人たちの阿鼻叫喚が聞こえてくるようで、読んでいて背筋が寒くなった。生活のすべてが破壊され、大切な人を失い、すさんでいく人々の心。そこに、デマが流れる。「朝鮮人」その言葉で人々はおのれを見失い、誤った情報に操られるように朝鮮の人たちに危害を加えていく。犠牲者の何と多いことか!まさに狂気の世界だ。災害の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。冷静な判断や行動、そして正確な情報の把握がいかに大切かがよく分かった。この作品は、決して忘れてはいけない災害の記録の書だ。ひとりでも多くの人に読んでもらいたい

ゆこりん : 19:04 | 作者別・・よしむらあきら