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2011年10月23日

三陸海岸大津波(吉村昭)


この作品が描かれた当時、三陸沿岸は過去に3度も大津波に襲われていた。明治29年、昭和8年、昭和35年。いったいそこから人々は何を学んだのか?津波を体験した人たちの証言をもとに、当時の状況を克明に描き出した作品。

過去に何度も大津波に襲われた三陸地方。「ここまでは来ない。」「来てもたいしたことはないだろう。」そういう考えが悲劇を生んでしまった。その証言の生々しさに、読んでいて胸が痛くなる。「地震が起こり津波の心配があるときは、まず逃げろ!」その教訓は、どんな時代になっても決しておろそかにしてはいけない。だが、年月は人の心を変えていく。そして、恐怖の記憶が薄れかけた平成23年、再び大津波は起こった。この本に書かれたような悲劇がまたしても起こってしまった。目に飛び込んでくる映像が、現実のものだとはどうしても思えなかった。それくらい悲惨な光景があちこちに見られた。繰り返される悲劇に言葉もない。津波を完全に防ぐことは不可能かもしれない。だが、犠牲者を出さない対策なら可能ではないのか?二度とこのような悲劇が起こらないことを切に願うばかりだ。この作品が、これから先もずっと教訓本として多くの人に読まれることを望んでいる。

ゆこりん : 19:54 | 作者別・・よしむらあきら