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2011年9月26日

影法師(百田尚樹)


消息を調べたときには、その男はすでにこの世にいなかった・・・。
茅島藩筆頭家老の名倉彰蔵は、固く友情を誓った男、磯貝彦四郎と過ごした日々を思い出す。そして、自分が戸田勘一だった頃のことも。不思議な絆で結ばれたふたりの男の、感動的な物語。

幼い頃、不幸なできごとで父を亡くした戸田勘一。彼を支えてくれたのは、かけがえのない友だった。つらいときや苦しいとき、友はいつも見守ってくれた。だが、あるできごとがきっかけで、ふたりの運命は大きく違っていく。出世の道を突き進む勘一。しかし、友は・・・。
光あるところに必ず影がある。表裏一体だけれど、そのふたつはあまりにも違い過ぎる。日の当たる道を歩き続ける勘一。おのれの幸せを捨て、おのれの人生のすべてを賭け、勘一の影に徹しようと決心した男。読んでいて、胸が締めつけられるような切なさを何度も感じた。人はここまで自分を犠牲にできるものなのか?私は彼に問いたい。「その人生に悔いはなかったのか?」これを友情と呼ぶには、あまりにも悲しすぎる。ラストは、涙がこぼれた。いつまでも余韻が残る、感動的な作品だった。

ゆこりん : 23:29 | 作者別・・ひゃくたなおき