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2011年9月10日

ちょちょら(畠中恵)


江戸留守居役だった兄の突然の死。そして兄の許婚千穂とその父入江貞勝の失踪。そこには、多々良木藩存続の危機が!兄と同じ多々良木藩の江戸留守居役を拝命した間野新之助は、兄の死の真相に迫ろうとするが・・・。

兄の切腹、許婚千穂とその父の失踪と、事態はかなり深刻なはずなのに、重苦しさをまったく感じさせない軽いストーリー展開になっていて読みやすかった。しかしまあ、江戸留守居役とは何と雑多な仕事の多いことか!その実態をこの作品で初めて知った。膨大な種類の仕事の内容を覚えなければならない。江戸留守居役組合の先輩たちの愛のムチ(?)も受けねばならない。新参の新之助に、のんびりしている暇はない。さらに新之助には、兄の死の真相を調べるという大仕事もある。それは、藩の危機を救うことにもつながるのだが・・・。
自分の藩さえよければいいというほかの者たちと違って、すべての藩のことを考えようとする新之助の奮闘ぶりはとても好感が持てる。新之助は、自分自身が思うほどダメな人間ではない。才能も勇気も、しっかり持っていると思う。
ラストは、「えっ!こういう終わり方なの?」と突っ込みを入れたくなった。限りなく余韻を残し、「この先に絶対何かある!」と思わせるものだった。はたして、新之助にまた会うことができるのか?うーん・・・。

ゆこりん : 20:19 | 作者別・・はたけなかめぐみ