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2011年6月11日

萩を揺らす雨(吉永南央)


「小蔵屋」という和食器とコーヒー豆の店を、年老いてもなお気丈に切り盛りしている杉浦草。ある日草は、友人である大谷から、鈴子という女性についての頼まれごとを引き受ける。その女性の息子と関わりを持ったことから、草はちょっとした事件に巻き込まれていく・・・。表題作「萩を揺らす雨」を含む5編を収録。

「おばあさん探偵が日常の謎を解く」という設定だが、ミステリーの謎解きの面白さを味わうというより、むしろ悲哀を感じる内容だった。怪しいと思われる家の周りを歩いていると、痴呆の徘徊者だと思われてしまう。草はそういう年齢なのだ。どんなにがんばっても、世間の「草は高齢者」という考えを変えることはできない。悲しいけれど、残酷な現実を突きつけられてしまう。けれど、草は前向きだ。草のように、年老いても生きがいを持ち、毎日を過ごすことができたらどんなにいいだろう。こういうふうに年をとりたいものだ。
しっとりとした味わいを持つ作品だと思う。さまざまな問題も含んでいて、考えさせられることも多かった。

ゆこりん : 14:20 | コメント (2) | 作者別・・よ他


コメント

悲哀・・・なんだかさびしい言葉ですよね。
それに輪をかけるような優しい、装丁。

ところでこの装丁の絵を書いている方
結構、有名でいろんなところで使われていますよね。

誰でしたっけ。

宮部さんの「誰か」あたりで使われてたかな?

投稿者 ats : 2011年6月15日 15:20

>atsさん
この絵を描いているのは、調べたら杉田比呂美さんと
いう方でした。イラストレーターそして絵本作家だ
そうです。
「誰か」「名もなき毒」の絵を描いてました。
そのほかに、森絵都さんの「宇宙のみなしご」、
東野圭吾さんの「サンタのおばさん」もそうでした。
atsさんに言われるまで気づきませんでした(^^;
「萩を揺らす雨」の主人公の草は、母と同じ年代
なんです。今の高齢者の状況がよく分かるだけに
読んでいて複雑な気持ちになってしまいました。
シリーズものでほかにも出ていますが、私は
もう読まないかも・・・。

投稿者 ゆこりん : 2011年6月15日 16:46