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2011年5月 2日
やがて目覚めない朝が来る(大島真寿美)
父と母が離婚した。小学4年生だった有加が母に連れられて行った先は、何と!父方の祖母の蕗の家だった。もと嫁と姑、そして有加。3人の生活が始まった・・・。さまざまな人の「生」と「死」を瑞々しく描いた作品。
有加の父と母が離婚したこと、有加の母がもと姑だった蕗のところに転がり込んだこと、それらにはそれなりの理由があった。けれど、人が生きていくためには、さまざまな苦悩や悲しみを心の片隅に追いやらなければならない時もある。恨みや憎しみを忘れなければならない時もある。それらひとつひとつを、有加は蕗の家に出入りする人たちからも学んでいく。少女から大人へ、成長していく命がある。けれど一方で、老いや病気で消えていく命もある。人はいつか、誰もが命の終わりを迎える。そうは分かっていても、きらめくような人生を送ってきた人たちの終焉は、読んでいてたまらなく悲しかった。
派手さはないが心にふんわりとした温かさをもたらしてくれて、やさしい気持ちにさせてくれる作品だった。