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2011年4月27日
ばんば憑き(宮部みゆき)
小間物屋「伊勢屋」の分家の佐一郎は、本家の一人娘お志津と夫婦になり、本家の跡取りとなった。だが、彼はいつもお志津のわがままに悩まされてきた。湯治の帰りに宿に足止めされたふたりは、ある老婆と知り合う。老婆は佐一郎に、50年前のできごとを語り始めた。それは、不思議な、そして忌まわしいできごとだった・・・。表題作「ばんば憑き」を含む6編を収録。
表題作の「ばんば憑き」では、老女が淡々と50年前のできごとを語る。ちょっと不思議な話だとは思ったが、それほど怖さを感じなかった。けれど、読み終わった後にじわじわと怖さが湧き出てきた。「やはり人の心は怖い。」そう思わせる話だった。また、「お文の影」では、子供の数より一つ影が多いというぎょっとするような話だが、こちらは怖さよりも切なさのほうが大きかった。5歳の女の子に起こったできごとは、哀れと言う以外に言葉が見つからなかった。「博打眼」では人の心の隙につけ入る妖怪を描いているが、その妖怪を生み出したのが人の心の醜い部分だということに複雑な思いを味わった。退治方法はユニークで、面白かった。「野槌の墓」はひとつの野槌にまつわる話だが、人の身勝手さが野槌の運命をガラリと変えてしまった。人の形をしているが心は鬼という者が、世の中にはたくさんいる。野槌はそういう者の犠牲になってしまった・・・。
6編は、個性豊かな話ばかりだ。そして、どの話も読み応えがあり、心に強く余韻を残す。善にも悪にも簡単に染まってしまう人の心を、本当によく描いている。作者の力量やその感性に、感心したり驚かされたりだった。「珠玉の短編集」と言っても過言ではない、多くの人にオススメしたい作品だ。
ゆこりん : 17:37 | コメント (2) | 作者別・・みやべみゆき
コメント
宮部さんの最近の時代物って全く読めてないんだけどシリーズものになってる?
この作品、シリーズものでなければすぐにでも読みたいんだけど。
たしか「あんじゅう」はシリーズものでしたよね。
昨年遅ればせながら「孤宿の人」が良かったもんでもっと
宮部さんの時代物読まないといけないと思ってます。
「あかんべえ」は読んでるよ♪
投稿者 ats : 2011年4月30日 22:47
>atsさん
こんにちは~♪
この作品はシリーズものではないので、すぐ読んでも
OKだと思います。
ただ、他の作品に登場した人物が出ている話が
あります。
「あんじゅう」に登場した人物も出ています。
また「日暮し」という作品に登場した人物も
出ています。「日暮し」もシリーズものです(^^;
とても面白かったです♪読んだら感想をぜひ
聞かせてくださいね(^▽^)/
投稿者 ゆこりん : 2011年5月 1日 17:28