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2011年3月29日

ほら吹き茂平(宇江佐真理)


大工の棟梁だった茂平は、今や隠居の身。暇をもてあまして気味の毎日だ。そんな茂平を人は「ほら吹き茂平」と呼ぶ。さて、茂平はどんなほらを吹くのか?表題作「ほら吹き茂平」を含む6編を収録。

嘘をつくのは良くない。茂平にもそれは分かっているはずなのに、ついほらを吹く。けれど、それは人を困らせたり怒らせたりするものではない。ちょっとした人の揉め事を丸く収めてしまうほらなのだ。癖というより、茂平の持つ才能なのではないだろうか。人は、「ほら吹き茂平」と非難めいて呼ぶのではないのだ。むしろ親しみを込めてそう呼んでいる。読み手にもそのことはしっかりと伝わってくる。思わず微笑んでしまうような話だった。この作品の中の6編は、ほのぼのとした話、ぞくっとする話、皇女和宮の謎にまつわる話など、バラエティーに富んでいる。人生というものについても、あらためて考えさせてくれた。なかなか味わいのある作品だと思う。

ゆこりん : 20:15 | 作者別・・うえざまり