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2011年1月11日
光と影の誘惑(貫井徳郎)
西村が競馬場で出会った男、小林が話したのは、現金輸送車襲撃計画だった。計画はうまくいき、ふたりの男は1億円を手にする。だが、思わぬ悲劇がふたりを待っていた・・・。表題作「光と影の誘惑」を含む4編を収録。
「光と影の誘惑」は、よく練られた作品だと思う。小林に誘われ、現金輸送車襲撃の片棒を担いだ西村。だが、完璧とも思えた計画に狂いが生じる。「仲間割れ」というありふれた題材だと思っていたら、とんでもない驚くべき結末が待っていた。話の展開、そして構成がよかったと思う。もうひとつ印象に残った作品は、「長く孤独な誘拐」だ。子供を誘拐された父親に犯人が突きつけた要求は、身代金ではなく、ある家の子供を誘拐するということだった。決して表に出ようとしない犯人。犯人の意のままに動かされる父親。緊迫した状況の描写に惹きつけられた。趣を異にした4編には、それぞれ違う面白さがある。楽しめる1冊だと思う。
ゆこりん : 19:35 | 作者別・・ぬくいとくろう