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2010年11月25日

マリアビートル(伊坂幸太郎)


息子に重傷を負わせた王子を追う木村。そして王子。ある依頼を受けた二人組の蜜柑と檸檬。ツキに見放された七尾。彼らは皆、東北新幹線「はやて」の車内にいた。やがて、それぞれの思惑が複雑に絡み合っていく。新幹線が目的地に到着するまでに、さまざまな問題は解決するのだろうか・・・。

いろいろな事情を抱えた男たちが東北新幹線に乗り込んだ。ひたすら目的地に向い走り続ける新幹線の中で次々に起こる信じられないできごと。一見、何の関係もないと思える者どうしの意外な接点。そして、荷物だけではなく命までもが奪ったり奪われたりする。まさにスリルとサスペンスの世界だ。個性的過ぎる登場人物たち、絶妙過ぎる会話、そしてスピーディーな展開、どれをとっても楽しめる。「いったい、作者の伊坂幸太郎は、この複雑怪奇な新幹線内の状況をどう収束させていくのか?」ラストに近づくにつれ、期待感が高まった。そして迎えたラストは、期待を裏切らないものだった。意外性もあったし、ほっとする救われた部分もあった。収まるものが収まるべきところに収まった。そんな感じさえする。伊坂幸太郎らしい、本当に彼らしい、充分な満足感を与えてくれる作品だった。

ゆこりん : 19:36 | 作者別・・いさかこうたろう