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2010年11月19日
民王(池井戸潤)
総理大臣の武藤泰山、その息子の武藤翔。このふたりが入れ替わった!!日本の国はどうなる?翔の未来がかかる就職試験の結果は?そして・・・ふたりは元に戻ることができるのか?また、裏に隠された陰謀を暴くことができるのか?
ろくに漢字も読めない大学生の翔が総理大臣に、そして泰山が大学生に。ふたりはそれぞれの役割を必死にこなそうとするが、いろいろな事件が巻き起こる。ドタバタ感が強いが、この作品の中にはしっかりと作者の思いが練り込まれていた。現代社会が抱えるさまざまな問題。その問題に真剣に取り組もうとせず、おのれの保身ばかりを考える政治家。本当に国の未来に憂いを抱いているのは、若者たちではないのか。作品の中で作者は叫ぶ。そのことがずしっと胸に響く。また、翔が就職試験のときに語る熱い思いも胸を打つ。入れ替わりは不可能だけれど、今の政治家たちに初心を思い出してほしいと強く願う。自分自身のことより国の将来のことを考え、理想に燃えていた若き日のことを。そうすれば、今の日本も少しはいい方向に向かうのではないだろうか。面白いだけではなく、いろいろな問題提起を含んだ作品だった。
ゆこりん : 20:12 | 作者別・・いけいどじゅん