« 深淵のガランス(北森鴻) | メイン | 食堂かたつむり(小川糸) »

2010年4月13日

プロメテウス・トラップ(福田和代)


かつては「プロメテ」呼ばれる天才ハッカーだった能條良明。その後彼は平凡な在宅プログラマーとしての生活を送っていた。だが、ある男からICチップの解析を依頼されたことで事件に巻き込まれていく。敵は、サイバーテロ・・・。見えない敵に、彼はどう立ち向かっていくのか?表題作を含む6編を収録。連作ミステリー。

パスポートの偽造、会社や政府機関のコンピューターへのハッキング、そしてスーパーコンピューターとのチェス対決の描写などに、作者のIT関係の知識が遺憾なく発揮されている。好きな分野なので、とても興味深く読み進めた。テーマはとても面白いと思うが、描写にぎこちなさを感じるし、ストーリー展開にも軽快さがなく、少々もたつきを感じる。また、描写不足のせいか、主人公の能條にもそれほど魅力を感じなかった。なので、読んでいてぐいぐい引き込まれるような感じではなく、そこがちょっと残念だった。だが、ラストは意外性があり、全体的には楽しめる作品に仕上がっていると思う。

ゆこりん : 16:57 | 作者別・・ふ他