« レインツリーの国(有川浩) | メイン | プロメテウス・トラップ(福田和代) »

2010年4月 6日

深淵のガランス(北森鴻)


花師・佐月恭壱には、もうひとつの顔があった。それは、絵画修復師の顔だった。彼は、大正末期から昭和の初めにかけて活躍した長谷川宗司の絵画の修復を、孫娘から依頼される。だが、この絵画には別の絵画が隠されていた。長谷川宗司はなぜ絵画を隠したのか?佐月は、その謎に迫っていく・・・。表題作「深淵のガランス」を含む3編を収録。

3編のうち一番印象に残ったのは「深淵のガランス」だ。絵画に隠された謎解きも面白いが、私にとって未知の世界である絵画についての描写も面白い。佐月恭壱が対峙する絵画・・・。緻密な描写は、読み手の頭の中に鮮やかな色彩を浮かび上がらせる。そして、息詰まるような修復の場面。隠された絵画を、佐月はどう処理するのか?絵画が隠された理由もなかなか面白かったし、ラストも感動的だった。そのほかの2編もよかった。
佐月にはまだまだ謎が多い。一体どんな過去を持つのか?魅力的な人物だけに、かなり興味をそそられる。これからの展開が楽しみだ。

ゆこりん : 19:54 | 作者別・・きたもりこう