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2010年3月31日
レインツリーの国(有川浩)
身近に、昔読んだ本の感想を語り合う友人がいなかったので、伸行はネットで検索をしてみた。心惹かれる感想を書いていたのは、「レインツリーの国」というブログの管理人の「ひとみ」だった。二人はメールを交換するようになる。そして、実際に逢いたいと願い始めた伸行に対し、ひとみはなぜか、頑ななまでに拒んだ。そこには、ある秘密があったのだ・・・。
ひとみには、好きとか愛しているとか、それだけで相手の胸に素直に飛び込めない事情があった。伸行がどんなに努力しても、障害を持つひとみの苦しみや悩みを完全に理解することはできない。お互いがお互いに不満を感じ、心の溝を深めていく。そんな伸行とひとみの恋の行方は?「乗り越えて!乗り越えて!」心の中で何度も叫びながら読み進めた。ふたりのゆれ動く気持ちや、互いに求め合う気持ちが、痛いほど伝わってくる。切ないけれど、こんな素敵な恋愛もあるのだと、久しぶりに感動してしまった。伸行やひとみの行動に多少のもどかしさを感じる部分もあったが、ラストはよくまとめられていて希望を感じさせる。心温まる恋愛小説だった。
ゆこりん : 15:38 | 作者別・・ありかわひろ