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2010年3月18日

ひまわり事件(荻原浩)


ある日突然、「ひまわり幼稚園」と有料老人ホーム「ひまわり苑」の間にあった壁が取り払われた。幼稚園の子供たち、老人ホームのお年寄りたち、それぞれが壁の向こうをおそるおそる覗いてみれば、そこには未知の世界(?)が広がっていた。ぎこちない交流が続く中、ある日衝撃的な事件が起こった・・・。

核家族化する中、幼稚園児から見ればお年よりはエイリアン、お年寄りから見れば幼稚園児はエイリアンに見えるかもしれない。年代はもちろん、考え方、行動思考パターンがまるで違う彼ら。ぎこちない交流を重ね、少しずつ信頼関係が築かれていく。ほほえましい部分もあるが、現代社会が抱える老人ホームの深刻な問題も描かれていて、いろいろ考えさせられる部分も多かった。事件の首謀者である元過激派学生だった片岡老人の悲痛な叫びが、問題の多くを語っている。一生懸命働き日本の国を支えてきた者が老いたとき、そこに何の希望も見えないのは悲しすぎる。
笑いあり、涙あり、作者お得意のパターンだが、少々長過ぎて読んでいる途中で飽きてくる部分があった。もっと簡潔にまとまっていた方が印象がよくなると思うのだが・・・。全体的には、まあまあ面白い作品だった。

ゆこりん : 19:40 | 作者別・・おぎわらひろし