« 雨を見たか(宇江佐真理) | メイン | 黒白(池波正太郎) »

2010年3月 4日

木練柿(あさのあつこ)


おしのが、娘おりんと清之介の出会いをしみじみと思い出していた頃、縁があり遠野屋に拾われ、清之介が我が子と思い育てているおこまが何ものかにさらわれた。清之介は木暮信次郎に助けを求める。おこまをさらった犯人の狙いはいったい何か?おこまは無事遠野屋に戻ってこられるのか?表題作「木練柿」を含む4編を収録。「弥勒の月」「夜叉桜」に続く、シリーズ第3作。

シリーズ2作目の「夜叉桜」で清之介に託された幼い命の行く末が案じられたが、おしのや清之介、女中頭のおみつらの愛情を受けすくすく育っていたのに安心した。おしのも少しずつ現実を受け入れ、元気を取り戻しているようでほっとした。ただ、今回の作品では、清之介の過去に関係する人物の登場や、それに伴って起こる事件などがいっさいなかった。このまま平穏に生活できるとはどうしても思えない。「闇の力」ははたしてこれから清之介にどう接触してくるのか?とても気になるところだ。今回の作品も心に切なくしみてくる話が多かった。描写に少々くどさを感じたが、おりんと清之介のことは特に胸にぐっとくるものがあった。これからが楽しみなシリーズだ。

ゆこりん : 16:58 | 作者別・・あさのあつこ