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2010年1月29日

もう一人の私(北川歩実)


パソコン通信で知り合った女性が、直接会いたいと言ってきた。30歳の十四郎としてネット上で彼女と会話をしていたのは、中学生の幹哉だった。幹哉は、自分が通う塾の講師馬島に十四郎として彼女に会ってくれるよう頼み込むが・・・。「月の輝く夜」を含む9編を収録。

ミステリーの中には、読んでいる途中で先が分かってしまい、読み終えたときに「やっぱり・・。」という失望感を味わうものがある。この作品は9つの短編から成る。これだけあれば読んでいてひとつやふたつ先が分かってしまうものがあってもおかしくないのだが、これがまったくない。どの話にも、読み手の想像を裏切る意外な結末が用意されている。それは小気味よい裏切られ方で、作者のひねりにおおいに感心させられる。「次はどんな結末が用意されているのか?」最後までワクワクさせられ通しだった。読後も満足感が味わえる、面白い作品だと思う。

ゆこりん : 17:18 | 作者別・・き他