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2010年1月25日

幽霊刑事(有栖川有栖)


経堂課長に釈迦ヶ浜に呼び出された神崎は、わけが分からないまま経堂に射殺された。幽霊となった神崎の姿は誰にも見えない。だが、ひとりだけ幽霊の姿を見ることができ、しかも話もできる男がいた。霊媒師を祖母に持つ早川だった。神崎はその早川の力を借り、自分が殺された事件の真相を探ろうとするのだが・・・。

神崎がいた巴東警察署。そこの課長の経堂が、神崎殺しの犯人だった。だが、幽霊となった神崎はそのことを誰にも伝えられないでいる。自分はなぜ課長に殺されたのか?その謎も解けないままだ。悲惨な状況なのだが、作者の軽快な文章は読み手の心をそれほど重くはしない。周りからは早川の一人芝居のように見える、神崎と早川のやり取りも面白かった。「黒幕は誰か?」「なぜ神崎が殺されたのか?」登場する人物全てが怪しく見える。そして後半・・・。早川とともに経堂を追いつめたかに見えたが、事態は思わぬ展開を見せる。意外な成り行きの結末は・・・?
かなりの長さだが、ストーリー展開がよく読み手を飽きさせない。黒幕の正体や神崎射殺の理由も無難にまとめられている。ラストには切なさも用意されていて、読後の充実感もある。面白い作品だと思う。

ゆこりん : 17:16 | 作者別・・あ他