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2009年12月16日

波紋(池波正太郎)


傘屋の徳次郎に情報を提供する博奕打ちの繁蔵。彼の兄が殺してしまった男と、大治郎を待ち伏せて襲ってきた男たちとには、関わりがあった!ひとつのできごとが波紋のように広がりを見せ、おもわぬ事態となっていく・・・。表題作「波紋」を含む5編を収録。「剣客商売」シリーズ13。

5編の中で印象に残ったのは、「波紋」だ。大治郎も小兵衛も、立場上敵を作ってしまうのは仕方のないことだ。けれど、恨みをもたれてしまうということは、なんともやりきれない思いがする。「波紋」のラストでは、繁蔵の恵まれなかった過去に触れた描写もあって切なかった。また、「剣士変貌」も印象深かった。環境しだいで人の性格がこうも変わってしまうものかと、驚いた。「分相応に生きる」それが一番いいのかもしれない。それを忘れてしまった横堀喜平次の人生は哀れだ。味わい深く、余韻が残る作品だった。

ゆこりん : 17:31 | 作者別・・いけなみしょうたろう