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2009年12月 2日

震える岩(宮部みゆき)


死んだはずの吉次という男が生き返った!?死人憑き騒ぎが起こる一方で、5歳の女の子が殺され、油樽の中に投げ込まれるという悲惨な事件も起きていた。不思議な力を持つお初は、兄六蔵や古沢右京乃介らとともに探索を始めるが、このふたつの事件が示したのは恐るべき真実だった・・・。

鬼となった人は怖い。鬼となった人が死んで、怨念を持った霊となるのも怖い。だが、それ以上に怖いのは、平凡でおだやかな暮らしをしている人を鬼に変えてしまう世の中のゆがみだ。恨みはさらなる恨みを呼び、何の罪もない者の命を奪っていく。罪を重ねる者、犠牲になる者、そのどちらも哀れとしか言いようがない。はたして、お初たちはこの怖ろしい連鎖を断ち切ることができるのか?作者の巧みな筆さばきは、読み手をぐいぐい物語の中に引き込んでいく。絶妙なストーリー展開だ。「恐ろしさ」のすき間を「切なさ」で満たしたような、そんな感じのする面白い作品だった。

ゆこりん : 18:08 | 作者別・・みやべみゆき