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2009年11月18日

希望ヶ丘の人びと(重松清)


「亡き妻圭子の思い出の地へ・・・。」
妻圭子をガンで亡くした田島は、美嘉、亮太とともに希望ヶ丘に引っ越してきた。そこには、思い描いていた生活とはちょっと違う現実があった・・・。いじめ、家族問題、親子問題、教育問題など、さまざまな難問が降りかかる。はたして、「希望ヶ丘」は、彼らの「希望」になり得るのか?

「話題がてんこ盛り。」まずそう感じた。今の世の中のいろいろな問題を含んでいる。それがごちゃごちゃにならずにきちんと整理整頓されてこの作品の中に収まっているのには感心させられるが、少々欲張りすぎかも・・・。「理想」と「現実」にはギャップがあり、世の中は思い通りにならない厳しいものだということはよく分かる。登場人物たちがそういう厳しい現実にさらされる場面では、読み手も喜怒哀楽が激しくなってしまう。けれど、ちょっと話ができ過ぎていて不自然ではないのか?ストーリーを凝るのはいいけれど、読み手が頷けるような地に足をつけた話でなければ、心の底から共感はできない。「泣かせよう。」「感動させよう。」そういう意図が見え隠れする文章は、逆に興ざめしてしまう。その点が少々残念だが、全体的には面白い作品に仕上がっていると思う。

ゆこりん : 18:11 | 作者別・・しげまつきよし