« 春の嵐(池波正太郎) | メイン | ドラゴン・ティアーズ(石田衣良) »

2009年11月12日

風花病棟(帚木蓬生)


心や体に傷を負い苦しんでいるのは患者だけではない。医者も同じことだ・・・。さまざまな医者や患者の心のひだを繊細に、そして切なく描き出した10編を収録。

死と向き合う患者を見守る医者。患者の苦悩を和らげようと努力する医者。乳癌に罹り必死に不安と闘う医者。顔を失った妻と妻を支える夫を見つめる医者。引退を間近に控えた医者・・・。いろいろな医者がいて、いろいろな患者がいる。さまざまな人間関係の中にあるさまざまな悲哀を作者は温かなまなざしで見つめ、描いている。中には切ないだけの話もあるけれど、人間として目をそむけてはいけない問題を含んでいるのだと、おのれ自身に言い聞かせながら読んだ。心や体が病んでしまったら、人はいったいどうすればいいのか?この作品の中に描かれているいろいろな人の生きざまが、その答えになっている。「静かでおだやかな中にも、強く心を揺さぶられるものがある。」そういう印象の作品だった。

ゆこりん : 17:14 | 作者別・・ははきぎほうせい