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2009年11月 2日

アナン(飯田譲治・梓河人)


初雪が降ったら死のうと決めていた記憶喪失のホームレス流(ながれ)。だが、ゴミ捨て場で生まれたばかりの赤ん坊を拾ったことから、彼の運命は大きく変わり始める。アナンと名づけられた赤ん坊には、不思議な力があったのだ・・・。

人は、それぞれ心に抱えているものが違う。哀しみを心の奥深く閉じ込め平気な顔をしていても、決して忘れ去ることのできないことがある。アナンは、そんな人たちの心を開いてしまう能力を持つ。誰もが、彼の前では自分を偽れない。そのことは、本当に人々の救いになるのか?また、そのことによるアナン自身の苦悩はどうなってしまうのか?ユーモアあふれる描写もあるが、たまらなく切なく、心が激しく痛む描写もあった。流や、ホームレスの人たちの希望の星だったアナン。さまざまな人たちの思いが心に注ぎ込まれ、アナンは成長していく。そして、彼は素晴らしい才能を発揮する。彼の瑞々しい感性が指先からあふれ出し、それは形となって人々を感動させる。アナンが有名になればなるほど、流との関係は・・・。ラストはホロリとした。心の中にポッと灯がともるような温もりを感じる作品だった。

ゆこりん : 17:11 | 作者別・・い他