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2009年10月15日

私が殺した少女(原尞)


私立探偵の沢崎は電話で依頼を受け真壁邸を訪問するが、待ち受けていた刑事たちにいきなり誘拐犯として逮捕されてしまう。いやおうなしに誘拐事件に巻き込まれていく沢崎。だが、この誘拐事件には複雑な事情が隠されていた・・・。

この作品では、最後まで犯人の姿は見えてこない。動機もはっきりとはしない。登場人物の中に犯人はいるのか?それぞれの人間の抱える事情の中に、犯行に結びつくものはあるのか?先が気になり、ページをめくる手が止まらなかった。しだいに絞り込まれる容疑者だが、作者は最後に意外な結末を用意していた。ほんのささいなできごとがやがて大きな渦となり、さまざまな人たちを巻き込んでいった。最後に残ったのは、少年の傷ついた心だけか・・・。やや冗長的な部分もあるが、しっかりとした構成と巧みなストーリー展開で、読み応えのある作品に仕上がっていると思う。

ゆこりん : 19:59 | 作者別・・は他