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2009年10月 7日

隠れ蓑(池波正太郎)


目の見えぬ武士と、その武士を助けいたわる老僧。旅の途中でふたりに出会った大治郎は、強く心を揺さぶられる。だがこのふたり、実は仇討ちの敵同士だった!彼らに危機が迫ろうとしたとき、小兵衛、大治郎父子が立ち上がる。表題作「隠れ蓑」を含む7編を収録。「剣客商売」シリーズ7。

表題作「隠れ蓑」では、人の心の不思議さや絆というものについて考えさせられた。老僧は、盲目の武士にとっては親の仇だった。彼は、自分が討たれる前に隙を見て、盲目の武士を倒すこともできただろう。だが、それをしなかった。盲目の武士を守ることに、おのれの人生の全てをかけたのだ。ふたりの間には信頼関係が生まれ、固い絆で結ばれていた。もし武士が、老僧の正体を知ったとしたら・・・。何も知らずに終わってしまったことが本当にいいことなのか、やりきれない思いがした。
7編どれもが味のある話だった。「徳どん、逃げろ」では、傘屋の徳次郎への八郎吾の思いにほろりとさせられた。読後、強く余韻が残る話だった。
さて、小兵衛、大治郎父子は、次にどんな活躍を見せてくれるのか?とても楽しみだ。

ゆこりん : 16:42 | 作者別・・いけなみしょうたろう