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2009年9月29日

最悪(奥田英朗)


鉄工所を経営する川谷は、不況下での仕事の減少、取引先の無理な注文などで悩んでいた。さらに追い討ちをかけるように、近隣の住民との間に騒音問題が生じていた。銀行員の藤崎みどりは、妹や家族の問題、上司のセクハラで悩んでいた。野村和也は、ヤクザとの間に問題が生じ、それを解決しなければならない状態に追い込まれていた。まったく関係のない3人が接点を持ったとき、事態は思わぬ方向に転がり始めた。はたして、3人の運命は?

誰もが、自分の置かれている立場や状況を好転させたいと思っている。だが、もがけばもがくほど泥沼にはまり込んでしまう・・・。この作品に登場する3人は、まさにそんな状態だった。努力がまったく報われない。状況はどんどん悪くなるばかりだ。坂道を転がり落ちるように、3人はあっという間に「最悪」の状態に陥る。追いつめられていく過程や、それぞれの心理描写は見事だった。特に、川谷の描写はすごい。動悸や息遣いが、読み手側に伝わってくるような迫力があった。3人の接点、そしてそこからのラストへの展開もよかった。「いったいどうなるのか?」そのハラハラ感がたまらない。読後もすっきりとしていて好感が持てる。分厚いけれど、一気読みさせるほどの面白さを持った作品だった。満足♪

ゆこりん : 18:51 | 作者別・・おくだひでお