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2009年9月14日

不連続の世界(恩田陸)


現実のはざ間にひっそりと潜む恐怖。気づいたとき、人は何を思いどう行動するのか?日常生活の中で塚崎多聞が経験した不思議でちょっぴり怖いできごととは?5つの短編を収録。

当たり前のことが当たり前でなくなる。「こういうものか。」と思っていたことが、根底からひっくり返される。日常生活の中に不気味にひそむ落とし穴のような、そんな感じのする作品だった。5編どれもが個性的な光を放っている。その中で印象的だったのは、「幻影シネマ」と「夜明けのガスパール」だ。「幻影シネマ」では、ある男の苦悩が描かれている。傷ついた心が記憶を作り変える・・・。現実の世界でもありそうな話だ。「夜明けのガスパール」は衝撃的だった。心が作り出す、ゆがんでいて虚構に満ちた世界。その世界に身をゆだねようとする多聞。ラストでは、この話を読みながら心の中で構築してきたものが、ガラガラと音を立てて崩れていくような感覚を味わった。驚きと感嘆に満ち溢れている恩田陸が作り出す世界。それを充分に堪能できて満足だった。

ゆこりん : 17:40 | 作者別・・おんだりく