« おそろし(宮部みゆき) | メイン | 私立探偵・麻生龍太郎(柴田よしき) »

2009年6月 6日

再生(石田衣良)


妻梨枝子を突然喪ってから2年。康彦は、6歳になる息子耕太と2人で生きてきた。そんなある日、梨枝子の友人だった谷内果歩から連絡が入る。彼女は、梨枝子のメッセージを意外な形で伝えようとする・・・。表題作を含む12編を収録。

「特別なことなど望んでいない。いつもの日常生活を送り、いつものささやかな幸せをかみしめることができればそれでいい。」
そう望んでも、それさえかなわぬことがある。哀しみ、絶望、虚無、喪失感・・・。次々と心を襲うそれらに対しなすすべがなくなったとき、人はいったいどうなってしまうのか?闇の底でひざを抱えうずくまるしかないのか・・・。
作者はそんな人たちに、やわらかでおだやかなまなざしを向ける。ほんのわずかな希望が闇の中でひと筋の光となったとき、彼らは再生の道を歩み始める。その過程は、読み手の心にしっとりとしみてくる。静かな感動をもたらしてくれる作品だった。

ゆこりん : 16:17 | 作者別・・いしだいら