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2009年4月22日

本所しぐれ町物語(藤沢周平)


菊田屋の新藏の弟半次が、10数年ぶりに帰ってきた。突然江戸から姿を消した半次に、いったい何があったのか?また、なぜ帰ってきたのか?喜びと戸惑いの中、新藏は半次を迎え入れるのだが・・・。「鼬の道」を含む12編を収録。

江戸の本所しぐれ町に住む人々の日常生活を、実に細やかに描いている。そこに暮らす人たちの喜怒哀楽は、今の私たちにも通じるものがある。また、登場人物も個性豊かに描かれていて、読んでいて表情が目に浮かぶようだ。本所しぐれ町に生きる人たちは、時には主人公的に、時には脇役的に描かれていて、12編全てを読むと彼らが立体的に見えてくる。その作者の構成力にも感心させられた。切ない話もあるけれど、心の中にぽっと火を灯してくれる、そんな話が多かった。のんびりとゆったりと、心穏やかに読める作品だった。

ゆこりん : 18:30 | 作者別・・ふじさわしゅうへい