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2009年1月24日

深層(朔立木)


女の子はなぜ片腕を切断されなければならなかったのか?
医療ミスをめぐり、さまざまな人間の利害関係が複雑に絡む様を描いた「針」を含む4つの短編を収録。

「針」のほかに、幼稚園の子供たち7人を殺した男の妻の心理を描いた「スターバート・マーテル」、手錠をかけられたまま車から飛び降り亡くなった少女にまつわる話を描いた「鏡」、精神を病み自殺を試みた息子が病院に運ばれやがて脳死に至るまでを、父親の目から見つめた「ディアローグ」が収められている。どの話も、決して報道されることのない裏の部分を描いている。
私たちは毎日、実に数多くの事故や事件のニュースを目にするけれど、そのほとんどはすぐに忘れ去ってしまう。だが、その事故や事件に関わった人たちは、ずっとそのことを引きずり、心に抱えたまま生きていかなければならない。この作品を読んでいると、否応なくその残酷な現実を突きつけられる。どの話も暗いが、ずしりと重みを感じるものばかりだった。

ゆこりん : 14:55 | 作者別・・さ他