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2009年1月20日

宣戦布告~加筆完全版(麻生幾)


敦賀半島沖で座礁した潜水艦から密かに日本に上陸した北朝鮮特殊部隊の11名。彼らの目的はいったい何か?近くには原子力発電所もある!日本の危機に打つ手はあるのか?本当に日本を救うことができるのか?衝撃の問題作。

特殊な訓練を受けた北朝鮮の精鋭11名が日本に上陸した!しかも彼らは、対戦車ロケット砲や機関銃、そして手榴弾を持っている。厳重な警戒態勢が敷かれるが、その内容はお世辞にも万全とは言い難かった。命令系統の煩雑さが、末端への指揮に混乱を生じさせる。最新鋭の装備で臨んでいるはずなのに、政府も警察も自衛隊も、たった11名の人間に右往左往させられている。
「向こうが撃つまで撃つな。」
「撃ってもいいが威嚇射撃にしろ。」
本物の戦争に突入するかどうかの瀬戸際なのに、上の人間のやることはマニュアルどおり。臨機応変な対応がまるでできない。たった一つの命令を下すのに何時間もかかるというお粗末さ。この信じられない状況が、犠牲者の数を増やしていく。それでもなお、政治家は目先の利益しか考えていない・・・。
もしこのようなことが実際に起こったら、日本政府は国民をちゃんと守ってくれるのだろうか?この作品に描かれている、危機管理体制の甘さから最悪の状況へと追い込まれていく日本の姿・・・。それが、明日にも現実のものとなるかもしれないという不安が、どうしても拭えない。とても恐怖を感じる作品だった。

ゆこりん : 20:26 | 作者別・・あ他