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2008年12月28日

家族八景(筒井康隆)


人が何を考えているのかすべて分かってしまう不思議な能力を持つ七瀬。彼女はこのことを他人に知られないように生きてきた。お手伝いさんとしていろいろな家庭を転々とする日々の中で、彼女が経験したことは・・・?8つの短編を収録。

仲がよい夫婦に見えるのに実際は・・・。真面目そうな人なのに心の中で考えていることは・・・。他人の心の中がすべて分かってしまったら、普通の人なら人間不信に陥るのではないだろうか。19歳の七瀬にとっても過酷なことだと思う。だから、内容はもっとミステリアスで深刻な展開かと思ったが、読んでみるとたてまえと本音が交錯する不思議な感じのする話だった。七瀬は自分の能力を使い、人の本音を引き出そうとする。そのことがその人の運命を左右し、時には不幸な結末を引き起こしてしまう。彼女の行動がはたして正しいのか、疑問に感じる部分もあった。人は知らなければならないこともたくさんあるが、知らなくていいこともそれと同じくらいあるのではないだろうか。七瀬には希望が持てる未来があるのか?人としての幸せを望むことができるのか?否定的な答えしか浮かばないのが悲しい。

ゆこりん : 19:37 | 作者別・・つ他