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2008年12月25日

イノセント・ゲリラの祝祭(海堂尊)


ある宗教団体の施設で12歳の男の子が死んだ。その死因の解明が発端となり、「医療関連死事業」の論議に拍車がかかる。田口公平は高階院長の「お願い」により会議に出席するが・・・。「バチスタシリーズ」第4弾。

今回のシリーズはミステリーっぽくない。医療事故死の死因究明のあり方を、さまざまな人間が議論する展開になっている。役人、医療従事者、法律学者、遺族代表などなど。誰もが自分の立場から言いたいことを言いたいだけいうので収拾がつかない。おなじみの登場人物田口や白鳥も、今回は影が薄い存在になってしまっている。壮絶な議論はそれなりに面白いのだが、述べられている内容がくどすぎる。今の医療の問題点を滔々と述べるのはいいのだが、度が過ぎるとうんざりしてくる。作者の思惑は、読み手を楽しませることではなく、この作品で自分の考えを主張することなのか?と勘ぐりたくなる。明らかに今までのシリーズとは趣が異なる。ラストもかっこよく決めようとしているのだが、なんだかすっきりしない。田口や白鳥に、もう少し活躍してほしかった・・・。

ゆこりん : 16:07 | 作者別・・かいどうたける