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2008年12月 2日

モダンタイムス(伊坂幸太郎)


先輩の五反田が手がけていたシステムの改良を引き継ぐことになった渡辺だが、単純だと思っていた仕事の裏には何か秘密が隠されていることを知る。特定のキーワード検索が、検索した者に災いをもたらすという事実の意味するものはいったい何か?渡辺は同僚とともに秘密に迫ろうとするが・・・。

巨大な組織の中では、人間はひとつの部品に過ぎない。人間らしい感情を持つこともなく、ただ黙々と与えられた仕事をこなしていく。いつか世の中がこんなふうに変わってしまうのではないか?いや、もうすでに変わり始めているのではないだろうか?また、何かを存続させるために都合のいい「事実」を作りあげ、人々にそれを信じさせているのではないだろうか?絶対にそんなことはない!と言い切れないところに怖さがある。「ゴールデンスランバー」を読んだときに感じた、得体の知れない巨大な何かの存在を、この作品でも感じた。ただ「ゴールデンスランバー」では巨大なものに対する無力感を感じたが、この作品ではわずかながら希望が感じられた。
登場人物の語る言葉の言い回し、ストーリーの展開、テーマ、どれを取っても伊坂幸太郎らしい作品だと思う。だが、一歩間違えば、どの作品も似たような感じになってしまう危険性もあるような気がする。ワンパターンではない作品を期待したい。

ゆこりん : 17:18 | 作者別・・いさかこうたろう