« 氷の華(天野節子) | メイン | モダンタイムス(伊坂幸太郎) »

2008年12月 1日

彼女の命日(新津きよみ)


楠木葉子は、帰宅途中何者かに胸を刺されて死亡する。まだ35歳だった。父亡き後、母と妹のめんどうをみてきた彼女には、結婚を考えている恋人もいた。1年後、彼女は他人の体を借りてこの世に戻ってくるが・・・。

毎年命日の日に一日だけ、葉子は他人の体を借りて甦る。自分亡き後、残された家族のことが気にかかるのだが・・・。
葉子は、自分の死の1年後の家族の様子を見て愕然とする思いを味わうことになるが、そのことは仕方のないことだと次第に納得するようになる。かけがえのない人を失う悲しみは深い。けれど、いつまでも悲しんでばかりいられない。葉子にとってはつらいことかもしれないが、それが現実だと思う。だが、変化するのは残された人たちばかりではなかった。葉子自身もだんだんと変化していく。自分や自分の家族より、体を借りている人たちのことを重視するようになる。たった一日体を借りるだけなのだが、その一日が、体を借りた人たちにとって大切でかけがえのない時間だと気づいていく。そして、それに気づいた葉子は・・・。せつなさも感じるが、読後はさわやかさも感じる作品だった。

ゆこりん : 17:24 | 作者別・・に