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2008年10月27日

ギフト(日明恩)


レンタルビデオ店のホラー映画の棚の前で、涙を流す少年がいた。その少年が死者の姿を見ることができるという事実に衝撃を受けた須賀原だったが、二人は死者の声に耳を傾け、行くべきところへ行けるように手助けすることにした・・・。5つの短編を収録。

死者の姿が見え、声も聞こえる。だが、そのことを誰も理解してくれない。中学生の少年橋口明生にとっては過酷な状況だったに違いない。しかし、手を差し伸べてくれた元刑事の須賀原とともに、死者の遺した思いや無念さを解き放っていく。それに伴い、明生や須賀原が抱える心の傷もしだいに癒されていく。死んでいく者も哀れだが、遺された者も切ない。読んでいて胸が痛くなるような描写があちこちにあった。この作品は生者と死者の物語であると同時に、生者の再生の物語でもある。ラストは救いがあって、本当によかった。

ゆこりん : 17:05 | 作者別・・た他