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2008年9月19日

破獄(吉村昭)


犯罪史上他に例のない4度の脱獄をやってのけた佐久間清太郎。いったい彼はどのようにして脱獄することができたのか?彼と看守たちとの攻防を描いた作品。

どんなに頑丈な手錠をかけ警備を厳重にしても、彼は脱獄する。難攻不落と言われた網走刑務所からも、やすやすと逃げてしまう。世の中に100%完璧なものなどない。99.9%完璧だとしても、佐久間は残り0.1%の不完全さを見抜いてしまう。その彼の洞察力や行動力、そして知恵には驚嘆させられた。破ろうとする者と破られまいとする者の行き詰るような攻防戦は、読んでいてとても面白かった。彼はこの先どうなるのか?彼の行く末が気になったが、ラストの鈴江と佐久間の交流は、胸に迫るものがあった。実際に起こったできごとをもとに書かれているだけあって、現実味あふれる作品だった。

ゆこりん : 14:15 | 作者別・・よしむらあきら