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2008年8月29日
九つの、物語(橋本紡)
ある日突然、いるはずのない兄が現れた。兄は2年前の兄と全く変わることなく温かく、そしてやさしかった。だが、兄はなぜ現れたのだろう?そこには哀しい真実が隠されていた。
2年前に死んだはずの兄。ゆきなにとってかけがえのない存在だった兄の突然の出現は、恐怖よりも懐かしさでいっぱいだっただろう。以前と同じように会話しながら2人で過ごす時間は、とても貴重なものだったに違いない。だが、兄はなぜ現れたのか?兄の死因やゆきなを思う兄の心の内が分かったときはとても切なかったが、作品全体はほのぼのとした温かさに包まれていて、読後感は悪くなかった。また、収められている9つの物語のタイトルがすべて小説と同じタイトルになっていて、その内容についても語られているのが興味深かった。未読の作品を読んでみたい気持ちになる♪心が安らぐ作品だった。