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2008年8月28日
埋み火(日明恩)
淋しさを抱えた老人が住んでいる家。どこから見ても失火火災。そんな共通点を持った火災が続けて起こる。「巧妙に仕組まれた失火火災?」疑問を感じた消防士の雄大は一人調べ始めるが、やがて火事に隠された切ない真実を知ることになる。
誰にも必要とされていないと感じたり、自分が大切に思っている人たちから無視される。生きていくうえでこれほど打ちのめされることはないだろう。この作品に登場する老人たちはみな、虚しさを抱えて生きている。だが、プライドを保ったまま生きがいのない生活にピリオドを打つ手段が「失火火災」とは、あまりに悲しすぎる。たとえ未然に防いだとしても、老人たちの境遇を変えることはできない。そのことが、重く心にのしかかる。テーマはいろいろ考えさせられることもあり興味深かったが、一気に読める作品ではなかった。何を読み手に伝えたいのか、もう少し的を絞ったほうがいいのでは?全体的にダラダラとした印象を受ける。主人公の雄大もあまり魅力を感じる人物ではなく、共感できる部分が少なかったのは残念だ。