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2008年7月18日
蟹工船・党生活者(小林多喜二)
厳寒のオホーツク海。そこで操業する蟹工船の中には、過酷な労働を強いられる乗員の姿があった。人間扱いされない彼らは、自分の権利のため、自分の命のため、団結して立ち上がるが・・・。「蟹工船」「党生活者」の2作品を収録。
「人として」の権利。それをあからさまに主張できる時代ではなかった。虐げられた労働者の権利を声高に叫ぼうとすれば、その先に待っているのは己の破滅だ。だが多喜二は叫んだ。作品を通して。読んでいて多喜二の情熱を痛いほど感じる。決して洗練された文章ではない。だが、自分の思いを込めるというより自分の思いをたたきつけるようにして書かれた作品は、読み手の心を強く揺さぶる。作品を通して、もっともっと多喜二の叫びを聞いてみたかった。彼の最期はあまりにも衝撃的だった。
小樽は、小林多喜二ゆかりの地だ。「小林多喜二文学碑」をたずねてみた。これを機会に、彼の作品をもっと読んでみたいと思う。