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2008年7月14日

さよなら妖精(米澤穂信)


1991年の春、守屋はある一人の少女に出会う。ユーゴスラヴィアから来たというマーヤ。たった2ヶ月だったけれど、彼女との思い出は強烈な印象を残した。「マーヤはどこから来たのか?」彼女の帰国後、謎解きが始まった・・・。

守屋、大刀洗、白河、文原、そしてマーヤ。最初読み始めたときは、彼らの他愛もない会話が退屈に思えてしょうがなかった。だが、読み進めていくうちに、会話の中に隠されているマーヤの思いにしだいに気づかされていった。どこに帰るかだけは決して言おうとせずに帰国したマーヤ。そこから守屋たちの謎解きが始まるが、ユーゴスラヴィアはひとつの国でないことを思い知らされる。退屈だと思えた会話の中にちりばめられたマーヤにつながる手がかり・・・。それを知ったとき、物語の面白さが見えてきた。マーヤはどこに帰ったのか?そしてマーヤのその後は?ラストは胸が痛くなった。戦争がいかに悲惨なものか!そして何気ない日常生活がどんなに貴重なものか!この作品に込められているものは、あまりにも重い。

ゆこりん : 17:07 | 作者別・・よねざわほのぶ