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2008年7月 2日

初湯千両(浅田次郎)


二百三高地の激しい戦いの中、生き抜いた寅弥。心に傷を抱える彼が、大晦日の夜に銭湯で一人の少年に出会った。父親をシベリアの戦いで亡くし、母と二人暮しのイサオ。寅弥はその親子の面倒をみようとするが・・・。表題作を含む6編を収録。「天切り松 闇がたり」シリーズ3。

貧しい暮らしをしている母と子の力になろうとする寅弥を描いた「初湯千両」、鮮やかな詐欺の手口を披露する常兄ィを描いた「共犯者」、おこんと竹久夢二のふれあいを描いた「宵待ち草」、一人の女のために楠木正成の太刀を一時的に拝借しようとする栄治の話「大楠公の太刀」、道化師の父親を持つ仁太と少年の日の松蔵の物語「道化の恋文」、松蔵が、持つはずのない二つ盃を持つことになったいきさつを描いた「銀次蔭盃」、どの話も読み応えがあった。一番印象に残ったのは「道化の恋文」だった。貧しさや自分の境遇から抜け出すのが困難な時代、はたして少年の夢は叶うのか?安吉一家に登場する男たちのかっこよさだけを描かず、その当時の切なさも見事に描いている。松蔵は、次はどんな話を聞かせてくれるのか?とても楽しみだ。

ゆこりん : 19:18 | 作者別・・あさだじろう