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2008年6月 5日

桜宵(北森鴻)


「三軒茶屋の香菜里屋という店を訪ねてください。」
1年前に病没した妻の手紙を見つけた夫は、香菜里屋を訪れた。そこで出されたのは薄緑色の桜飯。夫は初めて妻の思いを知ることになる・・・。表題作を含む5編を収録。

どの話もしっとりとした味わいがある。一番印象に残ったのは表題作の「桜宵」だ。口に出せない妻の夫への思いに切なさを感じた。妻の死後に初めてその思いを知った夫の心情も細やかに描かれていて、よかった。
香菜里屋は魅力的なお店だ。マスター工藤の、でしゃばり過ぎない控えめな人柄にも好感が持てる。謎解きの面白さ、そして独創的な数々の料理。読んでいて、同時に二つを味わえる。「本当にこんなお店があったなら!」と、思わずにはいられない。

ゆこりん : 16:30 | 作者別・・きたもりこう