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2008年3月13日

風の影(カルロス・ルイス・サフォン)


1945年、10歳だったダニエルは父に連れられて「忘れられた本の墓場」にやってきた。そこで出会った1冊の本「風の影」に、ダニエルは強く心を揺さぶられる。謎に満ちた作者フリアン・カラックスについて調べようとした彼は、やがて深い闇に足を踏み入れることになる・・・。

フリアンの著書を全て世の中から消し去ろうとする男が、「風の影」を執拗に追い求めていた。「男はなぜそんなことをするのか?」そして、謎に満ちた作者フリアン。ダニエルが真実に一歩ずつ近づいていく。一枚ずつベールを剥ぐように見えてくる過去の出来事。そこには人間のさまざまな感情が渦巻いていた。それは、読み手を圧倒する。人が人を愛する心、人が人を憎む心、この二つは時がどんなに流れても決して消え去ることはない。読んでいて、前者では感動を、後者では戦慄を味わうことになった。作品後半では、フリアンの過去とダニエルの現在とが微妙に重なり合ってくる。ダニエルの未来に待っているのは、フリアンのたどった道なのか?どんな結末が待っているのか?作者は読み手をしっかりとらえ、最後まで離さない。私も一気に読んでしまった。恋愛とミステリーが絶妙のバランスで融合した、読み応えのある作品だった。

ゆこりん : 18:05 | 作者別・・か他