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2008年2月28日

秋の牢獄(恒川光太郎)


「11月7日。この日をいったいいつまで繰り返せばいいのだろう?」
同じ日を何度も繰り返し経験する藍。やがて彼女は、ほかにも同じように11月7日を繰り返している人たちがいることを知る。表題作「秋の牢獄」を含む3編を収録。

表題作「秋の牢獄」のほかに、不思議な家を描いた「神家没落」、特殊な能力をもつ女性を描いた「幻は夜に成長する」が収められている。印象に残ったのは「秋の牢獄」だ。同じ日、同じ時を何度も経験する話はいろいろ読んだが、この作品は独特の雰囲気を持った作品だった。なぜそうなったのか?行き着く先は?それは全て読み手にゆだねられている。だが読んでいて、それを不満に感じたりはしない。「なぜそうなった?」「これからどうなる?」そのことを考えながら読むのは楽しかった。「あり得ない話だわ。」と片付けてしまうのは何だかもったいない。この世の中には言葉だけでは説明できないことが、まだたくさんあるような気がする。これもそのひとつかもしれないのだ。

ゆこりん : 16:57 | 作者別・・つ他