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2008年2月25日

夜市(恒川光太郎)


妖怪たちがさまざまなものを売る夜市。裕司はかつて弟を売り、そのかわり野球の才能を手に入れた。再び夜市が裕司の前に現れたとき、彼は自分の弟を取り戻そうとするが・・・。表題作「夜市」と、「風の古道」2編を収録。

第12回日本ホラー大賞の受賞作だが、「夜市」は怖さだけではなく、切なさや悲しさが漂う作品だと思う。弟を売った兄、兄に売られた弟。裕司は弟を取り戻せるのか?夜市の決まりをどう乗り越えるのか?夜市の独特の雰囲気も加わり、読み手は不思議な世界へと誘われていく。裕司の心の奥底にあったもの、売られた後の弟の人生、そして、意外性を持った結末・・・。そのどれもが、読んでいてとても悲しく感じられた。「夜市」はわずか80ページ弱の長さだが、密度が濃く、読後も余韻が強く残る作品だった。

ゆこりん : 15:55 | 作者別・・つ他