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2008年1月10日

幻の光(宮本輝)


「あの人はなぜ、私をおいて自ら命を絶ったのだろう?」
死んでしまった元の夫に、心の中で語りかけるゆみ子。それは再婚をしてからもやめられなかった・・・。幸せになりたいと思いながらも、過去にとらわれ続ける女性を描いた表題作を含む4編を収録。

この作品の中で一番印象に残ったのは表題作である「幻の光」だ。突然自ら命を絶ってしまった夫。その理由が見つからず、常に、とまどい、寂しさ、そして取り残されてしまったような孤独感を抱えているゆみ子。「なぜ死んだのか?」ではなく「なぜ生きられなかったのか?」、その理由が分かったときは、人としての寂しさや切なさを感じた。逝ってしまう者よりも、残された者の方がつらいときもある。どの話もあまり明るさは感じられない。読後、心に重りを抱え込んでしまったような感じが残った。

ゆこりん : 20:08 | 作者別・・みやもとてる