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2007年12月25日

ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)


「ぼくは、やってないのに!」
首相暗殺の犯人にされた青柳雅春は逃げる。信じられるものが何もない状況ではたして彼は逃げ切れるのか?陰謀に巻き込まれた男の運命は?

一人の男が陰謀に巻き込まれ、首相暗殺の犯人にされてしまう。その巧妙な罠や、犯人にされた男青柳雅春の逃亡シーンは、迫真に満ちている。巨大な組織を持ってすれば、一人の平凡な人間を犯罪者にすることなどわけないのだ。誰もが、いつもの日常生活を断ち切られる可能性がある。考えると、これほど恐ろしいことはない。まるでフラッシュバックするように、過去の青柳の日常生活が差し挟まれているのも効果的だ。「なぜこんな平凡な青年が!?」読んでいてそういう思いを何度も味わう。そしてそのことが、現在の青柳の置かれている立場の理不尽さを、より鮮やかに浮かび上がらせていくことになる。
とにかく夢中で読んだ。500ページ、一気読みだった。最初から最後までこれほど楽しませてくれる作品には、めったにお目にかかれない。読後も、ほろ苦い余韻が残る。ミステリーとして楽しいだけではない。張り巡らされた伏線、抜群の構成力、そして伊坂幸太郎らしい描写。どこを見ても、どれをとっても、完璧な作品ではないだろうか。

ゆこりん : 16:08 | コメント (4) | 作者別・・いさかこうたろう


コメント

得体の知らない怖さ、伏線の巧妙さ、そして謎、どれをとっても一級品で現時点での伊坂さん最高傑作を充分味わえました。

一番印象に残った言葉は「痴漢は死ね」でしたが、一番感動した言葉は「だと思った。」でした。ここで熱いものがこみ上げてきました…

投稿者 りべ Author Profile Page : 2007年12月26日 00:07

>リベさん
こんにちは。
まさにその通り!どれをとっても一級品です。
完璧な作品だと思いました。
「痴漢は死ね」「だと思った」
私もこの言葉には感動しました。
特に「だと思った」には、さまざまな思いが
たくさんこめられていると思います。
言った人物の気持ちは、言われたほうにしっかりと
届いているはず。
伊坂さん、ますます好きになりました~♪

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2007年12月26日 13:53

コメントありがとうございました。
伏線の張り方も見事だし、構成もすばらしいし、とにかくおもしろかったです。
人殺しをすることはあっても痴漢はありえないという父の言うこと、なるほどと思いました。
息子を信じきっている姿がよかったです。

投稿者 : 2008年3月14日 22:02

>花さん
おはようございます。
この作品は本当に面白かったです。
父と息子の関係にはホロリとしました。
↑にも書きましたが、「痴漢は死ね」
この言葉の意味は深いですね(*^▽^*)

投稿者 ゆこりん : 2008年3月15日 08:29