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2007年12月13日

追伸(真保裕一)


一緒に行くはずだった妻が交通事故に遭い、夫だけがひと足先に赴任先のギリシャに向かった。ギリシャの地で妻を待つ夫に届いたのは、離婚を願う妻からの手紙だった。いったい妻に何があったのか?手紙だけで構成された異色の作品。

離婚の原因はいったい何か?山上と妻美奈子の間で交わされる手紙から読み手はそれを探っていく。発想的にはとても面白いと思った。また、美奈子の祖父と祖母の手紙も、お互いに思いやりにあふれ、胸が熱くなった。だが実際に、こういう内容の手紙を書けるものなのだろうかという疑問も残る。平凡な生活を送る平凡な人が書いたとは思えない。「普通の人はこんなふうに書かないのでは?」と不自然に感じるところがあり、完全には感情移入ができなかった。美奈子が離婚を決意する理由も、納得できない。説得力に欠ける気がする。ただ、手紙のよさを改めて感じさせてくれる作品だった。読後、誰かに無性に手紙が書きたくなった。

ゆこりん : 16:42 | 作者別・・し他