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2007年9月 3日

木洩れ日に泳ぐ魚(恩田陸)


明日の朝は別れてしまう男と女。だが、彼らにははっきりさせなければならないひとつの事柄があった。なぜあの男は死んだのか?ひとつの部屋、一晩だけの語らい、一組の男と女。限られた空間、限られた時間の中で行われる真相探しの結末は?

限られた空間、限られた時間、しかも登場人物は男女一組。それなのに展開されるストーリーは幅も奥行きも深みもあり、味わい深い作品になっている。なぜ男は死んだのか?真相を探る会話は続く。だが、二人の会話から見えてくるのはそればかりではない。会話から過去の記憶が引きずり出され意外な事実が見えてきたとき、読み手はぎょっとさせられる。その計算され尽くしたようなストーリーの構成にはただ圧倒させられるばかりだ。記憶とは、なんて不思議なものなのだろうか・・・。ラストも残りすぎるほどの余韻が残る。不思議な魅力を持った作品だった。

ゆこりん : 17:18 | 作者別・・おんだりく